この関係を壊したくない。

俺が彼を見つけたのは、小さな川の流れる原っぱの隅っこ。
彼はずっと水の流れを見て微動だにしない。
そこの周りには何かの壁があるように、近づくことを拒むように重く足が竦む。
そんな足に鞭をして、彼に声をかけた。

「おっ…おい…何やってんだぁ?」
「・・・・・・・・・・・・・」

返事は返ってこなかった。
それでも、自分のプライドとしてここで引き返すわけには行かない。

「さっきルッツ達が探してたぞ…?」
「・・・・・・・・・・・・・」

なんだか自分が情けなくなってきた。
同時に、苛ついてきた。
なんなんだ一体。
自分は何か悪いことをしただろうか。
気分を害させることをしただろうか。
いや。俺様に限ってあるわけねぇはずだ。
なら、どうして彼…菊はこんなにまで沈んでいるんだろう…。

そこまで考えていた時、遠くのほうでルッツとフェリの楽しそうな声が聞こえた。
嗚呼、そうか。そういうことか。


「お前。あいつ等にいちいち嫉妬なんてしてたら身がもたねぇぜ?」
「・・・・・・・・・・・・・違うんです。嫉妬ではないんです」

やっと喋りやがった。

「どこが違うんだよ。ならなんで塞ぎこんでる」
「これは、自己嫌悪しているだけなんです」

そう言って菊はやっと俺を見上げた。
その目には、予想に反して薄らと涙が浮かぶ。

「私といても楽しい会話なんて無理なんです。それに、料理だって和食しか作れないし…」
(けれど、あの人を誰にも渡したくない)

「そんなこと、あいつ気にしたりするのか?本人はなんて言ってんだよっ」

泣かれるのは苦手だが、うじうじしているのは違う意味で苦手だ。




『菊は、菊のままでいいんだよ?無理しないでー』




「それでも!気になるんです!どうしても・・・・・!」

必死になって俺に話す菊を見て、良くわかんねーけど体が勝手に動いてた。



気が付くと俺は、小高い丘の上にいるルッツとフェリの元へ菊の手を引いてやってきていた。

「ちょっちょっと!いきなり何するんですかっ!離してください!!」

「あー!!菊ぅ~!どこいってたの~?・・・あれ?ギル?」

びくっ

「あーフェリちゃん!なんか菊がいいたいことあるみたいだから、今日はルッツと先帰るなぁ!!ほら行くぞっ!」
「はぁ?!おい!兄さん!!」




そう言って二人が帰った後。
二人が仲直り出来たのかは、また別の話・・・。


(どんな菊でも、俺は大好きだよ)
(そんな貴方だから、大好きなんです)

 

-------10/10/14(2:20)