ないてあげる。

【配布元:Abandon

 

 

 

何もない部屋。




あるのは必要最低限の家具があるだけの空間。


ここに、草灯はいつもどんな気持ちでいるんだろう。
どんな気持ちで帰ってくるんだろう。
どんな気持ちで俺を呼ぶんだろう…


きっと、すごく、寂しいはずだ。

だって、今、俺はすごく寂しい…。


「そうび……草灯……」


もう幾度となく呼び続けた名前。



いつからだろう。

草灯がいないと寂しくて、早く声が聞きたくて、温度を感じたくて堪らなくなったのは。

自分達にあるのは偽りの絆な筈なのに。
なのになんでこんなに求めてしまうのだろう。




「立夏…?どうしたの?」



瞬間、声に反応して顔をがばっと上げ草灯を見つめる。
帰って来た。
やっと来た。
待ち焦がれたものが。


「立夏?」


ぎゅっと草灯に抱きついた。
言葉なんか出てこなかった。
ただそれよりも、この思いのぶつけ方がわからなくて。




「立夏。ただいま…」



「遅いよっ!!……ぐずっ……俺…もう帰って来ないかと思った…!」






そういうと草灯はどこか嬉しそうな、でも困った顔をして俺の頭を優しく撫でて抱き返してくれた。

この涙は自分が寂しかったからだけじゃない。
滅多に泣かない草灯のために泣いてやってるんだ。



「ありがとう…立夏…俺を求めてくれて……可愛い…立夏…」


「うっうるさいなっ………ふっ…ん」




草灯を唇が俺のに触れた。
そのまま、どこかに持っていかれるのかと思うくらい深くされて、立っていられなかった俺は膝から崩れ落ちた。





----------09/04/04*製作----------