二人のこんな日常

ザァ――・・・

どひゃぶりの雨が空から降り注ぐ・・・。
まるで、全てを洗い流すように・・・。

こんな日はいつも家を出ずに自室ですごす。
窓の外を見つめ雨が降るのを彼が帰ってくるまで見続ける。

「ハァ――・・・・」

雨が降っていると、なんとなく暗い気持ちになってしまう。
でから、雨が嫌いだった。



**



カチャッ


「ただいま――!!」

誰かが家の中へ入ってきた。
たぶんあの声からして都筑さんだろう。
パタパタと廊下を駆けて走る都筑さん。
彼は私の部屋のまえで立ち止まり

「巽?居るのか―入るぞ――?」

と前置きして、扉を開いて入ってきた。

「あっ・・・都筑さん、お帰りなさい。ところで、どこへ行っていたんですか?こんな雨降りに。まさか、また買ってきたんですか?それ」

都筑さんが手に持っていた紙袋を指差し、それは何かと問う。

「あぁ・・・これ?うん!!駅前に今日オープンしたケーキ屋さんで買ったのVv」

ニヘラ~っと笑いながら話す都筑さんは私の座っている隣に腰をおろした。

「でねっでねっここのショートケーキすっっごく美味しいんだよぉ~!前に違うとこで食べたことあるんだよね~実はVv」
「巽も食べよう?」
「あぁそれでしたら、紅茶でも煎れましょうか。何かリクエストはありますか?」
「え~とね・・・・」

都筑さんは顔を私の方へ向けて考え始めた。
私はそんな都筑さんの上目遣いな目で見られいつもよりいっそう可愛く見えて仕方が無かった。

「・・・じゃぁ・・・ロシアンティがいいなぁ~~」
「分かりました。それじゃぁそこで待っていてください」
「え~~~俺も手伝うぅ~~」
「あんたがするとよけい忙しくなるからだめっ!!」
「・・・・ブーブー・・いいよ分かったよ待っとくよーだ!!」

都筑さんが拗ねている間に私はテキパキとことを進めていた。
それからすぐあと・・・


**


「はい、どうぞ」
「・・・う~ん~~いい香りVvありがとう巽Vv」

都筑さんの右側にティーカップを置くと、彼はそれを手に取り匂いを楽しんだ。
いつもの事だけれど都筑さんの笑顔は、見ているこっちも楽しくなるような・・・
そんな力があると、私は思う。

「巽~~~早くぅ~~~Vv」

都筑さんは私が考え事をしているのに焦れて私の服の袖を引っ張り次を促す。

「はいはいっ今切り分けますから」
「俺の、大きめにね!!」
「わかってますよ。はいどうぞ」
「ありがと~~巽Vv」

嬉しそうにケーキをほうばる都筑さんを見て


『なんて美味しそうに食べるのだろう・・・』


と、何気なく思った。

「~~~Vv・・・巽?」
「おいー!巽も食べろよぅ!そっそんなにじぃっと見られると・・食べにくいじゃんか~~ぁ///」
「ガキっぽい貴方が悪い。ほら、口の周りクリームいっぱいつけて・・・」

そんなことを言ってみても内心では怒るとこも可愛いなと思っている自分がいる。

「むぅーー・・・ん・・巽ってやっぱりお母さんっぽいよな・・・なぁ!」

なぁ・・・って・・・何で私にふられるのか分からないが・・・
そんなにそんなに母性本能に溢れていますか?

「そんなことはないですよ。」

私はにっこり笑って見せた。
その間も食べることはやめずに、食べながら何か言ってくる。

「ほらほら、そんなに急いで食べなくてもケーキは逃げませんよ?」
「だって美味しいんだもん!!」

彼は大きな声で力説してくる。
フォークを高々と上に上げながら。
でもやっぱり口の周りは相変わらず汚したまま。

「そんな食べ方してると、私が食べちゃいますよ?」
「えっ?!」

笑顔で彼に意地悪を言ってみた。
この人の困ったり怒ったりする態度は退屈しのぎになるから。
案の定彼は驚いた顔と声で私の期待を裏切らなかった。
私が黙って彼に笑いかけてると、

「だっダメ!!これ結構並んでやっと買ったのに!!やっと食べれたのに!!」

といって半泣き状態で私に言葉を返す。
私が思っていたのと違い彼は少し泣いていた。
ケーキ如きで泣けるのかこの人は・・・
ちょっと驚いたが、まぁこのままじゃ都筑さんは拗ねてしまうだろう。確実に。

「冗談ですよ・・・そんなこと本当に私がすると思います?」
「思うぅ!!(泣」
「∠+(●_● 怒)そんな減らず口言うのはこの口ですか?!」

彼のほっぺたをつねりながら言う。

「うーーーー!ごっごみぇんなしゃい~~」
「・・・なんだよー巽が聞くから素直に答えたんじゃないかぁ~」
「貴方は素直に答えすぎです!!」
「!!」

それから彼は何も返す言葉がなくなったのか、黙ってケーキをほお張っている。
でも、それからちょっとしてからまた彼を見たら、また彼は最初の幸せそうな表情に戻っていた。
ほんと、単純な人なんだから。
と、小さくため息を吐き、普段はあまりしないけれどなぜか今の彼にはしたいなと思い、
彼のほっぺについていたクリームをなめた。
彼はいったい何が起こったのだろうという表情で固まっていた。

私はまた彼の顔に近づき今度は軽く口にキスをした。
彼は瞬きを繰り返し、そして顔を赤くした。
相変わらずこういうことには疎いな・・・と思いながら反応が可愛いのでまた眺めて、
次に来るであろう言葉を待つ。

「いっいきなり・・・何?!」
「ついv」
「ついって・・・・」

まぁ私たちの休日ってこういう感じの繰り返しみたいなものなんですよ・・・

 

 

2004/05/09()昼UP