当たり前のような日常。

「ルル~!ルルーシュ~??」

遠くで自分を呼ぶ声が聞こえる気がする。
その声を聞かなかったことにして寝返りを打ち再び眠りにつく。

「あー!」

何なんだ…朝から騒がしいな…
どうやら台所付近にいたスザクが何かしたらしく、心配になった俺はもう一度寝返りをして起き上がった。

「ん…何なんだ…一体…」
「ルルーシュ…ごめんよ…」

スザクが謝りながら寝室に入ってきた。

「…ごめんと言う前に、俺の睡眠妨害に謝れ」
「あっそうだったね!ごめん…(しゅん)」


「で?今回は何をやらかしたんだ。」
「実は……」

そう言って手に持っていたものを見せる。

「それは…!俺の大事なティーカップ……!」

驚きで目をこれでもかと言うくらい見開くルルーシュ。

「えっ?!そんなに大事なカップだったの?!」

カップの破片を持つ手がカタカタと音を立て、スザクの今の心境を表す様だった。

 

その様子をルルーシュから見たとするなら、耳と尻尾ががへたっと垂れ下がった柴犬である。
「うっ・・・」
そして、そんな子犬のようなスザクに弱いのだった…。
(なっなんて顔をしているんだ…!!どうする・・・?!なんて声をかけるべきなんだっっ!!)
そんなことを心の中で叫んでいるルルーシュを余所に、スザクがいつの間にか視界から消えていた。
ルルーシュの頭の上に一瞬だが"?"が浮かんだかと思うと、不意足元からブツブツと声が聞こえてきた。
それに気付いたルルーシュは、床にしゃがみ、うずくまるスザクをじっと見つめ、目の前で手を振って見せた。
「ごめ…ごめんなさい…。僕今日ぐらいルルーシュを休ませてあげたくて…」
「それで、これか?」
そう言って、スザクの手の中のティーカップを指差す。
俺は今すごく意地悪な顔をしているに違いない。
「・・・・」
「・・・・はぁー。まぁいい。お前の所為で完全に目が覚めてしまった。紅茶を入れなおせ」
「・・・っ!!うん!!」
そう言ってパタパタとスリッパを鳴らして台所に駆けてゆくスザクを、俺はあえて視界に入れずにリビングのソファにドカっと座った。

『今日ぐらいルルーシュを休ませてあげたくて…』 

スザクが言った通り確かに、ここ最近の仕事の量はハンパなく多い。
ゼロレクイエム以来、平和を取り戻しつつあった"日本"をスザクと俺で、影ながら支える。まあ寧ろ、仕事をしているのはほぼ俺なのだけれど。

 

だが、俺ひとりでは決して成し得なかったことだ。
スザク一人の力だけでも大きい。
「・・・・・・・今日ぐらい・・・・我侭を聞いてやってもいいか・・・・」



(そういえば、最近C.Cが大人し過ぎる…いったい何があったのか…。騒いでいたら面倒だが、逆に大人しいと気になる…;;)


腕を組みながら『う゛~っ』っと呻き声を発するルルーシュに、いつの間にか戻ってきたスザクが目の前のテーブルに紅茶を置き『どうしたの?』と、いつもの表情で言う。
気になりはするもののスザクに相談するとろくなことになったためしがないため言うのを躊躇う。
そんな状況を知ってか知らずか、目の前にいきなりスザクの顔が現れる。

「っ?!」

そして、自分のおでことそれをくっつけて

「熱は…ないよね…?」

そんな失礼なことを言ってくる。

「ばっばば馬鹿がっ!////」
「ホントにどうしたの?今度は顔が赤いけど…」
「うるさい!!」



**



知ってるよ。

君が僕に強く当たるのも、ホントは照れ隠しだってことぐらい。
だって、僕はいつも君を見てきたから。
君のドジでおっちょこちょいな所とか、プライドがエベレストよりも高いとか、ネコや動物や人にまで好かれる僕の主。

そんな君の全部が愛しいから、もう二度と傷ついて欲しくないから。

僕は君の為なら何だってするよ。だから、僕の傍でずっと笑い続けていて欲しいな。
そう思うと顔が自然に笑みのかたちを作る。

いつだって、君の一喜一憂は僕を揺り動かし、感情を左右させるんだ。

君が楽しそうにしていれば僕も楽しいし、哀しければ僕だって哀しい。

『ひとりじゃないんだよ』って、言葉では上手く伝えられないんだけれど、そのぶん、君が寂しくないように傍にいる。
もう、心が離れないように・・・ずっと・・・。