私と貴方の関係は。

「あっ…あそこにいらっしゃるのは…」

そう言って目を向けた先に居たのは、ルートヴィッヒさんとなにやら楽しげにいるフェリシアーノくん。

(お二人で、あんなにはしゃいで……・・・)

「あ~!菊だ~~~ww久しぶりwこっちにおいでよ!!」

二人をじっと見ていると、視線に気がついたフェリシアーノくんが私に手を振って呼びかけてくる。
それに軽く会釈をして応えると距離を縮める為に足を踏み出す。

一歩ずつ。一歩ずつ。

なんだか、自然に動いているけれど、感覚の無いその踏みごたえはまるで、雲の上を歩いているような浮遊感があった。
自分は今、どんな表情をしているだろう。
笑えているだろうか…?
もう、近くまで来たはずなのに、どこを歩いているかわからない。

どうしよう。
自分が実は凄く臆病で、小心者で、こんなにも今のこの気持ちに納得がいかない。
自分が理解していたよりも、自分は独占欲が強かったのか。
こんな気持ち知りたくなかった。
知らなければ良かったのだ。
そうすれば、こんな思いはしなくてすんだのに。

「どうしたの菊?悩み事?」
「どうした菊、お前らしくも無い…」

悶々と考えていたらいつの間にか目の前まで来ていた。
目の前に来ても顔を俯かせている私を心配して二人がそれぞれに言う。

「いえ、何でもございません。それより、お二人はいったい何を…」

聞かなくても、たいした理由は無いのだろう。
自分よりは遥かに近い二人は仲がいい。
それに比べて自分は滅多に逢いに行けない。
例え仕事じゃなくてもだ。
そんなことは、どうしようも無い問題なのだから仕方の無いことなのに。
一緒に居られないことが、凄く悔しくて、寂しくて、つらい…

「菊?」
「へ?」

咄嗟に顔を上げれば、フェリシアーノくんの手が、私の頬に触れた。
瞳を覗き込むようにして聞く彼の目は、いつものおちゃらけた感じがまったく無い。
寧ろ、その瞳に吸い込まれてしまいそうになるそれは、心配とは正反対の瞳。
その筈なのに、冷たく感じないのは、自分がいかにこの方に入れ込んでいるかだ。

「菊…。本当にどうしたの?今日の菊、少し変だよ?」

そう言って、親指で私の目の淵をなぞると、そのまま口に運んで短く「しょっぱいね」と当たり前なことを言ってのけた。
その行動の一部始終を見ていたであろうルートさんは、わなわなと震えながら顔を真っ赤にさせて「おっおおお前は!!いつも女性にもこんなことをしているんじゃないだろうなぁぁぁぁ?!」と発狂していた。
そんなやり取りを見ながら、今の彼の行動を思い出して、顔が熱くなるのを感じた。
それと同時に、さっきまで鬱々と考えていたものが一気に吹っ飛んだ気がした。





(誰にも渡したくないから)
(君は僕のでしょ?)
(貴方のものにしてください!!)

(オレ忘れられてる…?)

 

------------------------10/08/06(木)