「~~♪♪」
コンコン
「ごめんください」
数回ドアを叩いて挨拶をすると、中から慌しい音がして、程なくして扉が開け放たれた。
そこには、目を爛々と輝かせている王さんがニコリと笑って立っていた。
「待ちくたびれたアルよ!さっ中に入るよろし!」
「それでは、失礼致します」
その笑みに導かれるように中へとお邪魔すると、居間にはつい先ほどまで用意していたのか飲茶が着々と用意されてゆく。
「もう少しで終わりアルから、椅子に座って待つアルよ」
そう言って厨房に戻った王さんはすぐに戻ってきて同じテーブルの椅子に腰掛けた。
そして、勧められるがままにお茶を一口含むと、居間まで緊張していたのか心が幾らか安らいで行く気がした。
ポカポカとした気持ちになって、緊張していた訳を忘れるところだった。
そうだ、自分は、今日、彼に大事な話があって来たのだ。
「そういえば、急に我の家に来たいとは、何かあったアルか?」
顔を覗き込まれて、とっさに顔を俯かせる。
そして、自分でも気付かない内に小刻みに体が震えたていたと思ったら、いつの間にか横に来ていた王さんと目があった。
「・・・菊?どうしたお腹痛いアルか?それとも熱中症?」
そう言いながら王さんの顔が近づいて来ると額同士がぶつかり合う。
ただ、それだけの行動なのに、何故だか目が離せないでいた。
驚いて目を見開いている私を余所に、王さんは目を漂わせながらぶつぶつとひとり言を言う。
どうしよう。
私は貴方が好きなんです。
でも、どうやって言葉にすればいいのかわからなくて。
でも、確かに、これだけは言える。
「あの!」
「∑なっ何アル?!」
「私と、結婚してください!!」
なんだか、異様に声が部屋に響いては消えた。
言った。
取りあえず言えた。
そう安堵して、弾みで閉じていた目を開ければ、またしても目の前にはあの人が。
「菊!!お前のところはそんなにまで破綻しそうなのか?!」
あれ?
えっと…あれ?
そんなつもりで言ったんじゃないんですが…
「菊の頼みだ!仕方ないからなってやるアル!書類はどこアルか」
そう言ってどこかに消えそうになった王さんの手を掴む。
「…本当に…よろしいんですか…?」
「我のことを疑うアルか。いいに決まってるアル!」
そう言っていつもの笑みを零した王さんは私の頭を抱き撫でるといきなり頬をつまんできた。
「ふぇ・・・」
「一応夫婦になるんなら、我が夫アルからな!覚悟するよろし」
「あっ…はい。よろしくお願い致します」
私の想いは多分ほんの少ししか伝わっていないけれど…
結果オーライで、いいですよね?
(朝食は日本食でいいですか)
(毎朝は勘弁アル…)
10/08/25(13:14)