遠くて近い人。

もし、私に貴方の隣に立つ資格があるのなら
 もし、貴方の私に対する感情が嘘でないのなら
 もし、私のこの感情が嘘ではないのなら

 貴方は私と共に生きてくださいますか・・・?



**



 私は長い間独りぼっちで、けれどそれが寂しいことだなんて考えたことは無かった。


 貴方に出逢うまで。








 『お前寂しくないのかよ』

 出逢って初めて言われたのがその言葉だった。
けれど、たったそれだけの言葉でも私の奥に疑問を落としていくには充分だった。


 『海はこんなにも広いんだぜ!まだお前が知らないことが山ほどあるんだ!』

 そう言っている貴方はどこかの誰より輝いていて、文字通り私には光りのような存在だった。
それと同時に、淋しさが強くなった。隣にいるのに、貴方は遠くを見ていたからだった。


 『俺が連れて行ってやるよ。いざとなったら俺がお前を守ってやるから!
だから、俺と一緒になってくれないか?』

 そんな…甘い誘いを当時の私には断る理由なんて、何処にもなかった。

 ただ "傍にいたい" それだけだった。

 けれど、時のいたずらか時代が進むにつれて貴方は変わられた。以前の少年さは無く、他との交流もせず。そして、身近な者に暴力を振るうようになった。
 それでも私は貴方を信じて耐えました。ただひたすらに"傍にいたい"その一身で。



**



「おい菊!最近お前どうしたんだよ!ええ?!」


 酒を飲み充分に酔っ払ったアーサーは口調を強めに詰め寄ると、隣に座る菊の胸倉を掴む。
それまで手元の酒を殆ど飲んでいなかった菊は、掴まれた拍子にグラスを床に落としてしまった。
けれど、こんなことはいつも起きている事だと特に気にすることなく、目の前の人を避けるように顔を伏せる。

 

-------------------12/06/07(22:45)