雪の日の貴方

 

その日は 雪が降っていた・・・

 



深々と降り積もる雪を、私はただただ見つめていた・・・






「都筑さん・・・・・・」






無性にあの人に逢いたくなった。


雪は あの人を思い出させる










「あっ・・・邑輝~っ!」
「何をやっているんですか都筑さん?!」
「えっ・・・・と・・・・あはは~~・・・;;」


都筑さんの住まうのは木造2階建てのアパートの1階だ。
周りには建物はあまりなく、雪が積もるとよく子供が遊びにくる。

その庭の端にあるであろう溝に尻餅をついた格好で彼はそこに居た。
どうやら、雪ダルマを作るのに足元をよく見ていなかったらしい。
彼の近くには雪ダルマの真っ二つに割れた無残な姿がそこにあった。


私はというと、そんな都筑さんを見て驚く半面呆れてもいた。
彼がドジで、能無しなのは今に始まったことではないのだが・・・
まさか、ここまでドジだとは。

「都筑さん・・・・・・;そんな格好だと風邪を引きますよ?」
「そうなんだけど・・・そっそれが・・・;;」

私が問いかけると、彼はばつが悪そうに目をそらした。
よく見ると、彼の身体は少し震えていて、声もどこか頼りない。(いつものことだが)
一体何時間そこに嵌っていたのか、彼はどうやら凍えているらしかった。


「くしゅんっ」


「ほら、言わんこっちゃない・・・
風邪で熱でも出して、挙句休んだりしたら・・・秘書殿に完全に怒られますね」

いいながら近寄り彼を抱き起こす。

「う゛~~~・・・邑輝~~~;;」

巽の怒る姿を想像して、助けを求めるように私の胸に顔を埋める。
そして訴えるように顔を上げてその紫の瞳で私の瞳と合わせる。

そこにあった紫水晶のような瞳は潤んでいていつもよりも濃く、それでいて輝いている。
その瞳いっぱいに溜まった雫を親指で拭ってやる。


「そんなことで泣いていてどうするんですか?
そんなことだから皆さんに笑いものにされるんですよ?」

「・・・だって・・・巽・・・怖いんだもん・・・。そりゃ優しい時もあるけど・・・」
「それは、秘書殿にとって貴方が大切な存在だからですよ」


そう言いながら、都筑さんの身体にまとわり付く雪を払い、彼の腰に手をやり自分の方へ抱き寄せる。


「そっ・・・そうかな・・・・・・・・・」
「そうですよ」


少し顔を俯かせて聞いてくるそれに即答する。

少しは納得してくれただろうか。
彼は周りのものよりも少し考え方がズレているから心配だ。


「じゃぁ・・・・・・邑輝も俺のこと大切?」


再び顔を上げて問うてくるその頬に手を添えてみると、都筑さんはその手に自分のそれを重ねる。
少し不安で、でも期待するような目で私を見てくる。


「・・・大切ですよ。貴方のことを心から愛しています・・・」

そう言い終わると私は都筑さんの唇に自分のそれを重ねた。


「・・・んっ・・・・・・・・」


軽くした後彼を見やると、彼は不満げに見上げてきた。


「続きは部屋に帰ってからにしましょうか」
「え~~~~・・・」
「貴方が外でも良いとおっしゃるなら、私は構いませんよ?(にっこり)」
「!!!あっそう、いう、意味じゃっ;;」


私が営業スマイルでそう言い放つと、口をパクパクさせ手と頭を同時に横に振る動作をする。
その顔は少し紅潮している。


「冗談ですよ。そんなことをしたら秘書殿に何をされるかしれないんで。
それに、都筑さんも恥ずかしいでしょう?」
「当たり前だ!・・・邑輝って優しいんだか、意地悪なんだかわけわかんないよ・・・」


ハァ~・・・っと溜め息を吐く彼をに


「さあ行きましょうか。本当に風邪を引いてしまう」

そう言いながら彼を横抱き(姫抱き)にして足を進める。

「おっおい!この抱え方やめろって!恥ずかしいっ」

「何か言いました?」


嫌がる都筑さんに営業スマイルをまたもやお見舞いする。
すると「ナンデモアリマセン・・・」といいながら私の胸に顔を埋めて抵抗をやめた。


「良いじゃないですか、へるもんじゃなし。私はこの抱え方が性に合っているんです」
「でもっ・・・」

「ほら。そんなことを言っている間に、もう着きましたよ?」
「えっ」





「恥ずかしいのは今からが本番なんですから。
楽しいみにしていてください(にっこり)」



助け出したのは私なんですから、ご褒美くださいますよね?

 

----------------------------------08/08/06製作*08/08/16UP